砂糖菓子より甘い恋1
一の二 初めての出会い
見送りを断った龍星は一人、牛車に乗り込んだ。
ありえない気配を感じて思わず構える。
「驚かす気はなかったの、ごめんなさい」
即座に影が声を出した。
「何者だ」
龍星は思わず声をあらげた。
「毬よ」
凜とした涼やかな声。
これが噂の。
夜闇に慣れてきた瞳をこらす。
髪を無造作に束ねた細い影は、遣いの小僧が着るような着物を纏っていた。
「人の車で何をしていらっしゃいますか?お父様が心配してらっしゃいましたよ」
龍星は穏やかに話す。
「あれは自分の心配をしているだけよ。風変わりな姫がいるなんて知られたら、出世に響くと歎いてるだけよ」
そこまで一気にまくしたて、影は龍星を見た。
まだ幼さの残る顔ではあるが、確かに綺麗で意思の強そうな瞳が印象的だった。
「……あなた、私を殺しにきたの?」
怯えると言うよりは、戦う瞳だった。
「いいえ。
そんな気はさらさらありませんから、その短剣から手を放してくれませんか?」
龍星の言葉に、毬は背中に隠していた左手を出した。短剣を握りしめる手は震えている。
「ごめんなさい」
少女はばつが悪そうにうなだれた。まるで叱られた仔犬がしょげているようだ。
ありえない気配を感じて思わず構える。
「驚かす気はなかったの、ごめんなさい」
即座に影が声を出した。
「何者だ」
龍星は思わず声をあらげた。
「毬よ」
凜とした涼やかな声。
これが噂の。
夜闇に慣れてきた瞳をこらす。
髪を無造作に束ねた細い影は、遣いの小僧が着るような着物を纏っていた。
「人の車で何をしていらっしゃいますか?お父様が心配してらっしゃいましたよ」
龍星は穏やかに話す。
「あれは自分の心配をしているだけよ。風変わりな姫がいるなんて知られたら、出世に響くと歎いてるだけよ」
そこまで一気にまくしたて、影は龍星を見た。
まだ幼さの残る顔ではあるが、確かに綺麗で意思の強そうな瞳が印象的だった。
「……あなた、私を殺しにきたの?」
怯えると言うよりは、戦う瞳だった。
「いいえ。
そんな気はさらさらありませんから、その短剣から手を放してくれませんか?」
龍星の言葉に、毬は背中に隠していた左手を出した。短剣を握りしめる手は震えている。
「ごめんなさい」
少女はばつが悪そうにうなだれた。まるで叱られた仔犬がしょげているようだ。