『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
彼女の視線が俺の後ろに逸れた。
スルリとベッドを離れ、スタスタと近寄って行く。



「どうしました?トイレですか?」


既に濡れているパジャマのズボンを黙認して、彼女は祖母を連れ出した。

少しも怒ることなく、当たり前のように相手に接する態度は見事だ。
これが姉の結華なら、間違いなく怒鳴ってるとこだろう。


彼女の態度は慣れにも近い。
もしかすると、そういう仕事をしてたのか?


(医師との繋がりもあると言うなら看護師とか…?)


病院関係者なら他にも様々な職種がある。
医療事務や栄養士、検査技師かもしれないし、病棟関係者だったかもしれない。
いずれにしても人に関わる仕事をしてたとして、だからあんなにも手馴れているのか。


(それで、あのチャラい医師とも知り合いなのか…?)



あれこれ思いを巡らせながら彼女が部屋に戻ってくるのを待った。
けれど、なかなか戻ってこない彼女の様子を見に和室へ行くと、布団の中では、祖母が彼女の背中を叩きながら子守唄を歌っている。

それを聞きながら、何故か彼女が泣いてるみたいに見えた。…向けられてる背中が小刻みに震えているような気がしたからだ。


どうして泣いてるのかワケが聞きたくても、祖母が彼女を手離しそうにもなかった。



…仕方なく諦めて襖を閉めた。


俺達はまた、別々の部屋で眠ることになってしまった……。




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