『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「婚姻届…返して下さい！」



はっきりとした声でそう言うと、泣き出しそうな笑顔を浮かべた。



「あたしには、久城さんの奥さんは務まりません。おばあちゃんの面倒も責任が重いし…荷が重過ぎます。
お世話は誰か他の方に頼んで下さい。久城さんのお嫁さんも、別の人にして……」


ぺこりと頭を下げられた。
続けてきっぱりと告げられた。



「お願いしますっ！」


強い声で発せられた言葉は、あのお見合いの日と同じものを感じさせた。
自分の意思を発動させて、彼女自身がそれを望んでるんだ…と思わせた。



「何故だ…」


問いかけは、彼女に対してだけ言ったのではない。
これまでも同じ様な経験は何度かあった。
ごく稀なことだったけれど、その度に言いようのない不快感に襲われた。


「どうしてそんなこと急に言い出すのか教えて欲しい。ばあちゃんの面倒を見るのを頼んだのがいけなかったのか⁈
それとも、昨夜、客を連れ帰ったのを怒ってる⁈ 」


どちらの問いにも、彼女は違います…と答えた。

落ち始めた涙の意味が分からず、「じゃあ何故⁉︎ 」と責めたてるように聞いてしまった。



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