『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
発してしまった言葉を聞いて、プッと吹き出された。
その彼の様子を見たら、さっきの暗さも何処かへ飛んでいってしまった。


「す、すみません…失言でした…!」


口を押さえ込んで謝ると、彼は気を良くしたように言った。


「失言なんかじゃないよ。俺、自慢じゃないけど片付けって大嫌いでさ、いつもばあちゃんから言われてた。
剛の部屋が一番汚いって。きちんと掃除できないのならせめて寝る部屋だけは見栄え良くしなさい…って。それでこの状態」


マンションのハウスクリーニングを週一で頼んでたのもその為だ…と話す。
足元に気を付けて歩くよう諭す彼の言葉に、改めて室内の様子を見回した。

床には雑誌やDVD、CDや小物に至るまでが散乱してる。
棚には沢山の本が並び、並びきらない物は縦にも積み上げられてる。

剛さんは床に置いてるCDで山を作り上げ、それを適当に隅に追いやり、「座って」と頼んだ。



(座るって……何処に?)


そう聞きたくなるくらい物で溢れ返ってる。
絶対に掃除なんかされてないふうな床に直接座るのは嫌で、そこらに転がってた円形のクッションを下にして座った。


「何か飲もうか」


備え付けられてたクローゼットの中には小さなワンドアの冷蔵庫が入ってた。
その中にあるビール缶はバドワイザーで、緑の缶はジンジャーエールかと思ったけど……


「サイダーでいい?」


…あ、サイダーなのか。


「はい。いいです…」


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