貴方がくれたもの
高架下

頭上で強い風が吹き、次いで大きい音がなる。
電車が過ぎるとその場は静まり、また、男の演奏が始まる。


その様子を少女がしゃがみこんで見つめる。男は、線路沿いの人の通りそうにない場に籠を置いていた。
宙を見つめ、息を吸い込むと、その喉から出るのは天上の調べ。たった一人の演奏だというのに、少女にとって、それはどこのオーケストラよりもきらきらと輝くものだった。

一曲を終えて、また電車が過ぎると、男は少女の前にしゃがみこんだ。
視線を合わせて微笑みかけると、一枚のCDを籠の中から取り出した。

「これ、あげる」

そう言って少女の髪をわしわしと撫でると、そこから去っていった。
少女は手元にあるCDを眺める。嬉しかった。

そうだ、お父さんに自慢しよう。


ある晩、一人家出を決行した少女は、こうして家に帰って行くのだった。


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