嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


ふと気付くとぼんやりしていたせいかパソコンの画面が暗い。そこには浮かない様子の自分の顔。適当にキーをポンと押して復活させる。

たとえ身体を繋げるだけの関係でも、世の中の恋人たちが過ごすようなイベントができなくても、それでいいと納得したのはわたし。

電話が鳴り、反射的に受話器を取った。

『成海か?』

「はい、課長?お疲れ様です」

『悪い、今駅まで来たんやけど書類忘れてしまった。デスクの上に封筒あるやろ?』

椅子から立ち上がって課長席を見ると確かにA4サイズの封筒が置いてある。

『悪いけどそれ持って1階ロビーまで降りてきて。オレ戻るから。あんまり時間がないんだよ』

「了解でーす」

封筒を手に取りエレベーターで階下へ降りたところで社屋に走り込んできた課長に遭遇した。

「成海、サンキューな!」

封筒を掴むとまた走り出して行く。
よっぽど時間がないんだな。

また戻るためにエレベーターのボタンを押すと、フワリと後ろから百合の花のような匂い。
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