嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


門を開けてスーパーへ行こうと向きを変えたところで後ろから腰を取られてまた門の中に戻された。

「鍵」

低く冷たい声で命じられる。


全身から不機嫌を隠しもせず物騒な気配。


玄関に入った途端、抱き上げられて履いていたサボが落ちてカツンカツンという音が静かな家の中に響いた。

そのままソファーまで運ばれて座らされ、池上くんが床に座りわたしの顔を見上げる。

「病院に行ったら退院したって聞いた。調子は?」

「あ・・・・・もう大丈夫・・・・・」

膝の上で握りしめているわたしの両手が池上くんの大きな手で包まれた。

安堵するように池上くんが目を伏せる。

「病院でお兄さんに会った」

肩が揺れる。

わたしの手を包んでいた手が、首筋を撫で、頬に触れた。

「誰が誰にフラれた?」

言葉は優しいのに微かに苛立ちが混じるのがわかる。

「ーーーーごめんなさい・・・・・」

「何に対して?」

「・・・・・・・・・・割り切れなくて」

「何が?」
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