嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


「大丈夫やと思うけど、また具合が悪くなったらおいで。オレも健太郎も今夜は当直やから」

健太郎さんの代わりに斯波先生が答えた。

「・・・・・ありがとうございます」

池上くんに腕を取られたまま歩き出す。
会計を済ませて外に出ると、誰かが乗ってきたタクシーがたまたまいて、それに一緒に乗り込んだ。

「住所」

短く池上くんが促すので、慌てて運転手さんに自宅の住所を言った。

深夜の京都の街を走り出したタクシーの中で、池上くんが大きな息を吐く。

「主任・・・・・あの・・・・・」

「どアホ!身体に悪いって分かっててなんで呑むんやっ!なんで一言、言うとけへんかった!?知ってたらどないしても
助けてやった!」

一気にまくし立てられて思わずドアの方に後ずさった。

「あの・・・・・でも・・・・・呑むフリしてハンカチに吐き出したし・・・・・大丈夫やと思って・・・・・」

「お前が死んでしまうかと思ったわ!青い顔して息も切れ切れでーーー!オレの心臓止める気かっ!」
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