嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
またキミが欲しくなる。


「大丈夫、襲ったりしません」

やけにきっぱり言い切った。

「それはオレのセリフだ、バカ」

「あ、そうか」

そう言いながら小さな門扉を開けて、中へと入る。

「どうぞ、古くてあんまり綺麗やないんですけど」

平屋建ての木造家屋。
成海が玄関のガラスの入った格子戸を鍵を開けて、電気をつける。

綺麗じゃないと言ったけれど、三和土にはサンダル以外の靴もなく、すっきりとしている。

どんなところで生活しているんだろうという興味が、こんな深夜に家に上がり込む非常識さを心の奥に押し込めた。

成海の後をついて玄関に入るとその先にのびる廊下を見て言葉を失う。

壁を覆う天井まで届く本棚。
びっしりと本で埋められていた。

驚くオレの気配に気付いたのか、照れくさそうに成海が笑う。

「本の虫なんです、わたし。休みの日は用事がないとずっと読んでいるので」



成海らしいーーーー。
ふと口許が緩む。

6帖ほどの板の間のキッチンと続きの和室はカーペットが敷かれ、ソファーが置いてあった。
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