嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


「オレのじゃないよ、爺さんが買って使ってなかったから借りてるだけ」

買ったマンションを使わずにおいてるなんて充分セレブだと思いますが・・・・・?億ションだって聞いたような気もする。

住む世界が違うというより、生きている次元が違う。

「なんか・・・・・ウチみたいなちっちゃいボロ家にお呼びするの悪いみたいですね」

僻みではないけれどつい口をついて出た。

突然片頬をぶにっとつかまれる。

「ばあか、オレは成海のウチの方が落ち着くよ。今週土曜日、早速行くからな。その心積りしとけよ」

1日働いた後だというのに疲れも見せず、爽やかに手を振り歩き去る後ろ姿をつかの間見送り、駅へと続く階段を降りた。

上司と部下。

高校の同級生。

どの関係が今のわたしたちにしっくりくるのだろう?

地下鉄の真っ黒なガラスに自分の顔が映る。特別美しいわけでもないし、かといって目を背けたくなるほど酷い顔というわけでもない。
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