Repair of the world~フルート吹きの魔法使い2~

「そなたが未来から来た救い人か」

私の目線の先、テントの奥に椅子に座った髭をたくわえた中年の男性が、そう私に声を掛けた。

その男性は赤や青などの原色が織り交ざった派手な布を纏い、手には槍のようなものを持って地面に立てている。
ギラリと鋭い瞳で私を睨みつけるように見つめ、私は少し怯んでしまう。

「族長、彼女はリオン、私の元いた世界から時代は違えどこの世界にやって来た人間です。彼女の今いる世界は混沌とした悲惨な状況にあるようで、そんな世界を救うために私達に救いを求めてやって来たようです。族長の受けたお告げと全く一緒ではありませんか?」

「ふむ。その話が本当であればそうだが・・・。リオン、本当にお前は未来から来た救い人なのだな?」

「えっと・・・。何と言ったらいいか・・・。ただ、私がいた世界は確かに人は死に、家はボロボロに崩れ落ち、そして草花は死んで腐って。その光景は目を覆いたくなるくらいの酷い惨状です。この世界にいれば先の未来がそんな事になるのは信じられないかもしれませんが、私がいる世界は本当に酷い有様なんです」

証拠を出せと言われても、何も出せるものはない。
今あるのは手に持っているフルートと、私が今まで見てきたものだけ。
正直信じてもらえるのか不安だった。

自分がいた世界の過去であろう世界で、信じて貰えずにこのまま命を終えてしまったら、なんて考えたらぞっとする。
出来れば、生まれ育った世界で死にたい。
それが叶わないのならせめて、ウェインがいる場所で、私は・・・。

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