幕間
家族
気持で言うんじゃなくって、冷静に考えても。
私はつまらない女。


少し耳障りな目覚し時計を止めて、台所に行く。
今日も彼の朝食を作って送り出す為に。


 結婚して半年とちょっと、私は彼の事が分からない。
 昔の私を知りながら、結婚までする男。


冷蔵庫からお味噌や豆腐、他には何を使おうかしら?
彼の朝食は必ず白だしの味噌汁が欠かせない。


 幼くして親の温もりを知らない子供だった。
 やっと出会えた心の許せる人も婚約と同時に事故死。
 世間の目は私には少しばかり冷たすぎた。

 そんなにまで。
 皆には、僅かばかの彼の保険金を私が必要としてるように見えたの?


少しばかり私より遅く起きてきた彼に言う。
「ねぇ、あなた。
私がもし、この朝食に毒でも盛ってたらどうするの?」


 あれ以来、私の心の温もり全てどこかへ行ったままなのに。


「俺の命はお前と結婚すると決めたときにお前にくれてやってるよ。
もし、そんな事がある時は間違いなく俺が悪い。」


 “当たり前だろ”なんて素振りで平然としている。
 私は、人より少しだけ温もりに慣れていないんです。
 彼は、私の何を必要としてくれているのだろう?


そして、彼はこう言って出て行った。
「行ってきます。」

私は戸惑いながらもこう言って見送るのだ。
「行ってらっしゃい。」


それから、1年半が過ぎた頃だった。

私は、お母さんになりました。
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