ジョナ ロンドは今日も願う
プロローグ
年老いた男には深いシワが刻まれている。
そのシワ一つ一つには忘れられない思い出が刻まれている。
そのシワを更に深くして男は静かに目を閉じて座っている。

部屋の外からは、多くの人々の声がする。
渇望の声。
人として当然の権利を望む声。

"怯えることなく、生きたい"

"我が子を痛むる事なく育てたい"

この土地は当然の権利を行使する事もままならない。
そして、皆待っているのだ。
この老いぼれた男の言葉を。
皆待っているのだ。
安息の刻を。

まだすべき事がある。
まだゆっくり絶望してはならないという。

ジョナ ロンドは今日も願う。
この途方も無いない憎しみの連鎖を終わらせねばと。
この身、この命の使い道を見定めねばと。

話してしまうと、些細なすれ違いだと気づくだろう。
しかし、感じてしまうと深い憎愛に嘆くだろう。

それでも願わずにはいられないのだ。

この対立を乗り越えた未来を描きたいと。

信じたものが違うからと傷付ける事の無い日を願わんと。

ゆっくりと目を開けると、


宗教家ジョナ ロンドはただ願う。

未来を生きる子供が健やかに育つ未来を。
ゆっくりと目を見開いて民衆の前に立つ決心をする。

これが彼の命日となった。

この地の対立は信仰の対立。
危害の対立。
経済の対立。

あらゆるものを乗り越えようとした男の半生をなぞらえる。
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