冷たい舌
 待てよ、そういえば、最初は木に寄りかかって、寝ていたような。

 起きたときは、確か地面に寝ていた。

 ノースリーブのワンピースの肩の辺りに鼻を寄せた。そして、髪の匂いも嗅いでみる。

 そこの匂いが一番強かった。

 なんで、途中から悪夢が消えたんだろう。
 なんで、私、あんなにぐっすり……。

 そういえば、風は少し冷たくなっているのに、身体は冷えてもいなかった。

 まるで誰かが何かかけてくれてでもいたかのように。

 透子は顔を上げ、少し離れた木の向こう、龍造寺に続く小道を見た。

 もうそこにはない影を追い求めながら。



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