冷たい舌
 透子は足を止め、和尚を見上げた。

 和尚のあの細い指先が、そっと頬に触れてくる。

 揺れる梢の音を聞きながら、透子は熱を帯びてくる額の封印を封じ込め、唇を重ねた。

 あの、神とも天女とも人ともつかないもう一人の私は、もう一人の私であって、決して別人ではない。

 今、こうしている私の中にも、『彼女』は確かに存在している。

 どんなに深く自分の中に埋め込んでも、またいつか胎動を始めるだろう。

 それはまるで闇に蠢く龍のように。

 息を潜め、少しずつ少しずつ、頭をもたげるその瞬間を待っている―

 月は、その心の内を暴こうとするように、煌々と天から透子を照らし出していた。



              一部 完
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