フキゲン課長の溺愛事情
「水上はがんばり屋だな」

(課長の声だ……)

 それを認識したとたん、心がほんわりと温かくなった。

 璃子が困ったとき、ピンチに陥ったとき、泣きたくなったとき。必ずそばにいてくれた人。ぶっきらぼうだけど、本当は思いやりのある人の声。

(そうだ……運んでくれたお礼を言わなくちゃ……)

 ぼんやりと思ったとき、額に大きな手が触れて前髪をそっと掻き上げられた。露わにされた額に、なにかが触れる。軽く押しつけられたそれは、柔らかくて温かい。

(なに……?)

 目を開けようとしたが、眠すぎてまぶたが持ち上がらなかった。

 大きな手がもう一度璃子の髪をいたわるようになでて離れた。

「おやすみ」

 達樹の低い声がして、そっと歩いて行く気配がする。やがて静かにドアが閉じられ、璃子はすぐに深い眠りへと落ちていった。 
< 149 / 306 >

この作品をシェア

pagetop