フキゲン課長の溺愛事情
(だけど、なに?)

 璃子が思ったとき、髪をなでていた達樹の手が首筋に触れた。耳の下辺り、一番弱いところに触れられて、璃子の首筋が瞬時に粟立った。

「うきゃああああっ」

 璃子は思わず悲鳴をあげて寝返りを打った。達樹がハッとしたようにベッドから立ち上がる。

「起きてたのか」
「お、起きますよっ。こんなところ触られたらっ」

 璃子は首筋を両手でごしごしと擦った。耳フー以上の衝撃だ。

「まったく、なんで課長は私の弱いところばっかり攻めるんですかっ」

 ブツブツ文句を言う璃子に、達樹が背中を向ける。

「それは決まってる。おもしろいからだ」
「もう、おもしろがってないで早く出て行ってくださいっ。着替えるんですからねっ」
「そうしろ。俺は朝食の準備をしておく」

 達樹が抑揚のない声で言って、ソファベッドから立ち上がった。そしてそのまま璃子の顔を見ずに部屋から出て行く。ドアが閉じられた後、璃子はソファベッドから起き上がった。
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