フキゲン課長の溺愛事情
第十二章 「後悔してる」
「璃子」

 甘く低い声で何度か名前を呼ばれた。璃子は温かなまどろみを手放したくなくて、小さく首を振った。その唇にやさしくキスが落とされる。

「璃子、そろそろ起きろ」

 それでも起きない璃子に、キスが熱を帯び始めた。わずかに開いていた唇を強引に割って、達樹の舌が差し込まれる。歯列をなぞられ、口内をなで回されて、璃子は艶っぽい吐息を漏らした。

「起きないと襲うぞ」

 低くかすれた声で、達樹がささやいた。

「んー……いいよ……」

 璃子は寝ぼけ眼で達樹の首に手を回した。その手を引きはがして、達樹は指先にキスを落とす。

「本当に襲いたいところだが……おまえが正気じゃなさそうだからな」

 達樹が言って、璃子の頬に口づけた。半分以上意識が眠ったままの璃子を見て小さく微笑み、彼女のあちこちにそっとキスを落とす。そのくすぐったいような心地よさに、璃子は喉の奥で笑って、再び睡魔に身を委ねた。
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