フキゲン課長の溺愛事情
第十四章 幸せに向かって

第一節 この恋は秘密!?

「ええええええーっ!」

 月曜日。就業開始時刻前の広報室に、沙織の絶叫が響き渡った。璃子はあわてて人差し指を立てて自分の唇にあてる。

「しーっ! 沙織、声が大きいって!」
「ご、ごめっ……」

 沙織はあわてて両手を口にあてた。それでも信じられない、と言いたげに、大きく見開いた目をきょろきょろと動かしている。

「璃子を同居させてくれてた人が……〝不機嫌課長〟だったなんて……」

 沙織が手で口を覆ったまま、もごもごと言った。

「まあ、驚かれるとは思ったけど……そこまで驚かなくてもいいじゃない」

 璃子の不満声に、沙織は何度も瞬きを繰り返した。

「だってぇ……。璃子に部屋を貸してくれてるのは、親戚のおじさんとか歳の離れた従兄弟とかかなって思ってたから……。まさか同じ会社の人で、よりによって藤岡課長だったなんて……」
< 264 / 306 >

この作品をシェア

pagetop