フキゲン課長の溺愛事情
「璃子さんのことは、短い期間ですが仕事ぶりも含めてじっくり見てきました。彼女が仕事の面でどれだけ一生懸命で優れているかは、周囲が彼女に下した評価でおわかりいただけると思います」
「まあ……先日室長になったものね……」

 母がつぶやいた。

「璃子さんは仕事ぶりだけでなく人間性も評価されています。それは、部長や人事課長の話からもたしかです」
「まあ……上司のあなたがおっしゃるなら……」
「それに、僕にだって欠点はたくさんあります。僕の会社でのあだ名は〝不機嫌課長〟でした」

 両親が瞬きをして達樹を見た。

「その僕を、璃子さんは笑わせてくれる。璃子さんがいてこそ、僕の毎日が、心が満たされるんです。僕たちなら足りない部分を補い合うことができます」
「まあね、今は同棲する人も多いとは思うけど……」

 母が語尾を濁した。そのとき、璃子の二歳年下の妹・菜子(なこ)が、おせんべいとお茶のお代わりを持ってリビングに入ってきた。

「お姉ちゃんたちも馬鹿正直だねぇ。テキトーなこと言ってこっそり同棲しときゃバレないのに。昔からお姉ちゃんは要領が悪いというか損ばっかりしてるっていうか……」
「菜子!」
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