フキゲン課長の溺愛事情
 今さら課長の前で気を遣っても仕方がないか、と璃子は開き直って言う。

「実はあんまり」
「そのわりには俺の歓迎会でたらふく飲んでいたと思うが」
「えー、見てたんですか?」
「あたり前だ。約束を守るかどうかちゃんと見てたんだ」

 その言葉にヒヤリとする。一応間に合ったとはいえ、歓迎会の開始時刻ギリギリだったから。

「俺は日本に帰国して日が浅いから、部下のことをあまり知らない。普段の言動を注意して見て、どういう性格なのかできるだけ早く把握したいと思ってる」
「そうなんですね。じゃあ、私はどんな人間だと思いました?」

 気になってつい訊いてしまった。達樹がニヤッとして答える。

「おもしろい人間だと思った」
「お、おもしろい!? それって違うと思いますけど! 普通、仕事ができそうとか、信頼できそうとか、そういう評価をしませんか!?」
「仕事上の評価を下すのはこれからだ。ただ、信頼できそうだとは思っている。そうでなければ、ここには呼ばない」
「なるほど……」

 一応は悪い評価ではないらしい。

「さて、食べたら水上は先にシャワーを使うといい」
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