いと、ゆかし





くまのキャラクターのポシェットは、何年も前から手放したことがないのだと、いつだったか先輩のお母さんは言っていた。

その言葉通り、ポシェットは少し汚れている。


「ん」

「あ、もういいんですか?」


そう言って首を傾げるけど、返答がくることはなく。

いつもより少し多めに残っているココアを、頬を赤くしながら飲んだ。


と。


先輩は何を思ったのか、すーっとすべり台を滑っていく。


「?」


砂場に降り立った先輩は、突然くるくると回り始めた。

しかも、すごいスピードで。


「何してるんだろ」


疑問を口に出してみるけど、答えてくれる人はいない。

しばらくじっと見つめていると、楽しそうな先輩に私まで楽しくなってきて。




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