まるでペットのような彼
奈央子と合流して会社の外へ行く途中、オフィスのラウンジから私の名前が聞こえた。

『最近の一条さん、色気あるよな。』
『ああ、一度くらい相手されたいかもって思うくらいだ。』
『つばめでも囲いだしたのかな?』
『まさか~』
『だよな~』

相変わらず、勝手なことを言われてる。


「噂になってるね」
呟くように言った奈央子とこっそりとその場を後にした。






いつものレストランへ行きランチを頼む。


「あのさ~」


今日も言いずらそうな奈央子だ。

「どうしたの?頼み事?」

ここのレストランに来るときは、たいてい話しずらいことがある時だ。


「いや…頼み事じゃなくて…」

「なんかあったの?」

「うん…彼氏と別れたんだ。」

「…えっ?」


奈央子と彼氏は、結婚を視野に入れてないとは、いえなかなかに理想的な大人のカップルだったんじゃないかと思う。

お互い、束縛しすぎずに仕事にも理解があって、適度な距離感を持っていたと思う。

別れたというのが不思議で、言葉を失っていた。



「そんな、ビックリすることでもないのよ。」


淡々と話しだす奈央子は、かなり落ち着いていた。









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