ハピネス
なんだかゾワゾワとしたものが体を駆け巡り、一瞬だけ呼吸を止めた。


この感覚は巴ちゃんが咳き込み、病室に戻るまでの道すがらに感じた感覚と似ている。


真っ黒なモヤの様な手が大量に自分めがけて伸ばされて、氷づけにあったかの様な冷たい恐怖感。


「別にどうもしないわ。さっさと帰るわよ天祢」


固まる私にそう返して、リリアは歩き出す。


だけど私はこれ以上聞きたいけど聞きたくない葛藤に苛(さいな)まれて、すぐに追いかける事が出来なかった。


「大丈夫…大丈夫」


己に言い聞かせるかの如く発した呟きは、私にしか届かない。
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