ぼくらのストロベリーフィールズ


「あの、すみません、一吾くんって、ここでどんな感じなんですか?」


「頑張ってるよ。手際いいし、みんなとも上手くやってるし」



店長は会話をしながらもひっきりなしに手を動かしていた。

カウンター奥でも、他の店員さんがせわしなく動き回っている。



忙しいところお邪魔しちゃった感じだな。


お礼を言って早くこの場を去ろう。



――そう思ったけど。



店の中はカウンターの他、奥には宴会用の座敷がある。


電話が鳴っても、店員さんは包丁を止められないようで、

奥からもう1人の店員がダッシュで受話器を取りにきた。



一吾くんが来ていないせいで、人手不足なのかもしれない。


壁を見ると『アルバイト急募!』の貼り紙がある。



一吾くんや尚紀くん、働いていてすごいなーって、どこか一歩引いて見ていた私。



父も母も、今それぞれの場所で頑張っている。


私は、まだ狭い世界しか知らない。


ありがたいことに、放課後はヒマだ。



ごくりと唾を飲み込んだ後、


「あの……ここって高校生でもOKなんですよね?」


と声を出すと、店長さんは手を止めて私をじっと見た。



どきどきと心臓が強く鳴っている。



「私も、その、働きたいんですけど!」と続けると、


「いーじゃん店長! この前女の子1人辞めちゃったし」

「うぉお制服! リアルJK! 新しい看板娘にしちゃいましょーよ!」


と、カウンターの奥から男の子たちの声が聞こえてきた。



前に一吾くん家で飲み会してた男の子たちもそうだったけど、

何で彼のバイト先には、こういうノリの人が多いんだろうか……。





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