ぼくらのストロベリーフィールズ



キャー! とA組の女子たちからの悲鳴が重なり合い、

一気に現実に引き戻される。


近くにいた人が慌てて逃げ出し、ギャラリーが大きな半円を作り出した。



「いってぇ……」



絡まる机と椅子の奥、チャラ男の苦しそうな声がした。



「…………っ」



びっくりして声を出すことができなかった。



私の目の前には、片足を前に伸ばした知らない男子。


かかとをつぶした上履きがつま先を支点にぷらんぷらんと揺れていた。



『……僕にはそんな力ないよ』



頭の中によぎったのは、

か弱くて細い、いじめられっ子だった美少年。



今、私の前にいるのも、

か弱そうで細そうな、美しい男子生徒。



しかし、今のキックはかなりの威力だったし、

腰ばきの制服のズボン、上は真っ黒なパーカーを羽織っていて。


……どっからどう見ても不良ってやつだ。



ざわついていたはずのまわりの生徒たちは、皆静まり返り、彼に注目している。



開けられた窓から風が吹き込み、

深く被ったフードからのぞく、色素を失った金色の彼の髪を揺らしていた。



彼はパーカーのフードを取り、私に優しい目を向けた。



「のばら。久しぶりだね」



その視線、言葉に自分の心が吸い込まれそうになるとともに、

これは現実感ゼロの夢なんじゃないかと思う自分がいた。



えーと。えーーーと。



――あ、あなたはだぁれ?









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