ぼくらのストロベリーフィールズ



倉庫にもう1つの声が近づいてきた。



「やだ! 離して! 言いつけるよ! ナズ悪いことしてる知り合いいるし!」



「あっそ」



「何なの? 意味わかんない! ナズは関係ない! ……キャッ!!」



彼女は背中を急に押されたようで、倉庫の入口に足をひっかけて転んだ。



突き飛ばした犯人は、一吾くんだった。


彼女を見下す目があまりにも冷たくて、私はびくっと体が震えた。



彼女――ナズちゃんは、


私たちの中心で顔をしかめながら立ち上がった。



「……っ!? 何? これ……」



倉庫内を見まわした彼女は状況を理解したようだ。



驚きなのか恐怖なのか、グロスたっぷりの唇が半開きになっている。



「……っ、意味わかんない! ナズ帰る!」


「だめーストップー」



一吾くんの後ろからサトゥーくんが現れて、勢いよく扉を閉めた。



倉庫内には、一吾くんグループと私。そしてナズちゃん。


拘束されたままのA組のチャラ男は抵抗をやめ、ぐったりしていた。



口を開いたのは、尚紀くんだった。



「いじめはねー、よくないと思うんだー」



「は? 何のこと? ナズ何もしてないし! 友達が勝手にやっただけだし!」



「ん~でもいろいろ証拠あるからさぁ~」とヒュウガくんが続ける。



「そんなの嘘でしょ? そうやっておどすん……」



私は自分のスマホのボイスメモをタップした。



『――ねえ、お願い、私の話も聞いて! 痛っ!



許してもらいたければ土下座すれば? いいね、それ!


どーげーざ、どーげーざ、どーげーざ。



あの……先生が早めに集まれって。あっ、ごめんなさいっ!


てめぇ、今見たの誰かにチクったらクラスにいれなくなるようにすっから。


ごめんなさい、ごめんなさい――』



うわー。怖ーっ。と男子たちから声が上がる。



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