ぼくらのストロベリーフィールズ



職員室で先生にいろいろ事情を伝えてから、自分のクラスに向かった。



すると、ダサい男子にナンパされている彼女の姿を見つけ、笑いそうになった。



一目で彼女がのばらであることが分かった。



あの頃と変わっていないようで、だけど、どこか変わっていた。



『のばら、久しぶりだね』



そう伝えると、彼女は表情を固めたまま驚いていた。



変わっていないのは、可愛らしい顔立ちやたたずまい。


変わっていたのは、彼女の家庭環境だった。



彼女の母親の浮気現場を一緒に見たのは偶然だった。



ショックを受けていたのばらを見て、僕は昔のことを思い出していた。



『一吾くんをいじめないでー!』



彼女はいじめっ子を追っ払った後、必ず僕の冷たい手を温かい手でつないでくれた。



今度は僕がその手を握る番だと思った。



結果、なぜか僕の世話をしてくれるようになったのだけど。



ちょっとおせっかいで、からかうと面白い反応をしてくれて、料理や掃除を一生懸命やってくれて。



のばらと一緒にいることに僕は心地よさを感じていた。



尚紀ものばらのことを気に入っていたけど、


それ以上に僕は近くに彼女を置いておきたかった。


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