君はオレを好きになる。
幸せの道
瑛斗と向日葵が愛を育んで一年が過ぎた。

あれから順調ではあるが、何もない。

待つとは言ったものの進展がない。

恋人と言うより家族?いや、本当に雇主と家政婦の様な関係にも思える時がある。

あの騒動はアキの結婚発表をもって終止符を打ち、瑛斗のスキャンダルも跡形もなく、なくなった。

そのせいもあってか、仕事は直ぐに戻って来て長期の休みはなくなり、反動なのか一層忙しくなった。

撮影で海外に行く事も多くなり家を空ける事も多くなった。

地方で仕事でホテルでの生活も多くなった。

向日葵は彼女というより、自宅を管理するだけの人になっていた。

今、一ヶ月近く家を空けている。

映画の撮影で家を空けていて、時差のせいか向日葵と全く生活が噛み合っていない。

なるべく連絡をしようと思うが、時間が合わない。

半年前から向日葵は猫を飼い出した。

この子が居るから淋しくないよ。と言っているが、淋しいのは向日葵より瑛斗の方が淋しくてたまらなかった。

結果、向日葵とはいたって健全なお付き合いのままである。

3日後、順調に撮影がいけば日本に帰れる。

ホテルのドアがノックされた。

「入るぞ。」

「杉本さん。」

「明日も早いんだから、簡潔に話せ!なんだ、相談って。」

杉本はソファーに腰掛けた。

「じゃ言われた通り簡潔に話すね…向日葵と結婚したい。」

「やっぱりそれか…。」

杉本は天を仰いだ。

「そろそろ認めてほしいんだ。この一年でファンも前より固定したと思ってる。見た目や人気だけのファンじゃなくなったはずだ。それに、こんなに離れてると不安でたまらない。」

「離れてる事でダメになるとでも?それでダメになるなら、そこまでだろう?!」

「ダメになるとは思ってない!ただ男として、一人の男として彼女を幸せにしたいだけだよ!杉本さんも結婚してるんだから、わかるでしょ!?」

「あぁその気持ちはわかる。でもな…。」

「もういい。俺は彼女と結婚する。もう決めたんだ。」

「瑛斗…何もダメとは言ってないだろ!」

「えっ?じゃいいの?認めてくれるの?」

「あぁ好きにしたらいい。もし今のファンが離れても、また作っていけばいい。俺がマネージメントするんだから安心しろ。」

「杉本さん…ありがとう。」

瑛斗は杉本に抱きついた。

「わかったわかった。ただ、籍を入れる前にちゃんと世間に伝えよう。順序は守れ!いいな?」

「うん!!」

「それよか、いつの間にひまちゃんにプロポーズしてたんだ?!」

「えっ?まだしてないよ?」

「はぁ??それが先だろ?断られたらどーすんだ?」

「向日葵が断るわけないじゃん!」

「どうすんだよ。もし、ごめんなさい。だったら?」

「断るわけないから、考えない!あっ指輪買わなきゃ!杉本さん買う時間作って!!」

瑛斗は杉本の目の前で手を合わせ懇願した。

「あぁなんとかするから、今日はもう寝ろ!興奮して寝れなかったっていう言い訳は聞かないからな。」

杉本はそう言うと部屋を出て行った。


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