流れ星スペシャル


トシさんは、さっきの持ち帰り用のパックにフタをして、十字に輪ゴムをかける。


それをポリ袋に入れ、そこにプラスチックのスプーンとお手拭きと、紅生姜の小さなパックを入れた。




「あの子に、もうあがってええって言うといて」


トシさんはホールを回っているアズちゃんのほうへ目を遣った。


「沢井さんですか?」


「あんたは知らんやろうけど、あの子が来てくれて、店はほんまに助かった」


たぶん気づいていない店長に、トシさんはそう諭す。


確かに今夜はアズちゃんがいなければ、店は大変なことになっていたと思う。




「そうだったんですね……」


今更ながら感心している店長に、さっきのポリ袋を差し出して、トシさんは言った。


「これ持って帰ってもらえ。上の目玉焼きは自分で焼いたって言えよ」


「え?」


「あの子、さっきあんたのこと心配して泣きそうになってたから、それ見たらちょっとは安心するやろ」


そう言うとトシさんは、目玉焼きトッピングのチャーハンを一皿手に、事務室へと消えた。




プッハ。トシさん、めっちゃ面倒見ええやん。


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