流れ星スペシャル
「飲んでないんですね」
カウンターの上に置かれた一升瓶は、まだ開けられてはいないようだった。
「ああ、トシが気をつかって持たせてくれたんやけど……」
どうぞ、と片手でスツールを勧めながら、桂木さんは言葉を続ける。
「あんなブザマなとこ見せたんやから、そりゃーみんな気にしてくれるよな」
冷蔵庫から麦茶のペットボトルを取り出し、彼はひとり言のように、そうつぶやく。
「ブザマなとこ?」
「酔っぱらってリカコにしがみついて『捨てんといて』って泣いたんでしょ、オレ」
え? そこまでは言ってないけど。
フ。どうやらトシくんに話をもられてるらしい。
本当は――
『好きや、リカコ』って言ったんだ。
『忘れられへん』って……。
その声がよみがえる。
「もう……大丈夫なんですか?」
思わずそう聞いてしまった。
桂木さんの本当の気持ちを知りたかったから。
リカコさんと会って、つらくはなかった?
あんなふうに誘われて、心は揺れなかったの?
そんなこと聞く権利、わたしにはないけれど、でも半年経って、気持ちがどう変わったのか、どうしても聞きたかった。