かわいい俺様くん
「待ってよ」
ぐいっと腕を引っ張られて、やむなく振り向く。何だよまったくさあ。
「それって、アレ? 柴崎に彼女とられたとかそういう人?」
やっぱそっちか。柴崎バカにモテるもんだから。女子から呼び出されたこともあるし、こういうのもある。
まだ付き合いたての初々しい2人なんですけど?
邪魔しないでほしいよね。てかあなたもこんなことされたら逆に怒るでしょ。そうでしょ。
「そうだよ。ムカつくんだよね」
「あー、それはわかるわ。かっこつけだもんね」
「え?」
驚いた顔をされても困る。事実なんだから。でもね。
「わかるけどさあ、あいつは人の彼女を奪うようなセコいことしないわけ。女の子に期待させるようなこともしないわけ。その彼女が勝手に勘違いしたんじゃないの?」
へらっとした笑顔で猫かぶった俺様くんだけど、いい奴なんだ。優しくするのは好きな奴だけって言うかわいさもあるんだから。
「ふざけんなよ」
怒らせたみたいで、腕をつかむ力が強くなる。そういうところが彼女は嫌だったんじゃないのかなあと思うけど、あたしには関係ないことなのでそれは言わない。