Memories of Fire
「ハンナも昨日はジークと盛り上がった? ヴォルフとフローラの結婚式が終わったから、次はハンナたちだもんね」
「ぐ……っ」

 ニコニコと悪びれる様子もなくハンナの傷を抉るエルマーの言葉に、彼女は咽て涙目になる。

「だ、大丈夫ですか? ハンナ様」

 フローラが慌ててハンナの背を擦ってくれる。ハンナはフローラが差し出してくれた水でクッキーを流し込み、息を整えた。

「ちょっと、エルマー。貴方のその軽さはいつまで経っても治らないのね」
「あーそれ、昨日マリーにも言われたよー」

 あはは、と軽く笑い飛ばすエルマーにハンナはため息をつく。だが、そういうお調子者だからこそ、ハンナも愚痴を言いやすいというものだ。

「……それに、逆よ。昨日だってジークってば、私にくっつくなとか言って! 私の体型が気に入らないの。肉を食べろ、主食がサラダじゃダメだ、って……そりゃ、私はちょっと痩せ気味ってクラドールにも言われているけれど」

 ぶつぶつとハンナの話す昨日のあらましを、エルマーはうんうんと頷いて「確かにハンナは細いもんねー」と納得しつつ聞いている。

「エルマーはジークの味方なの?」

 ハンナが不満げな視線を向ければ、エルマーはクスクス笑った。

「味方っていうか、俺は男だからジークの気持ちもわかるかな」
「やっぱり、胸なの!?」

 ハンナはキッと隣に座るフローラを見る。彼女は突然大きな声を出したハンナにビクッと身を竦ませた。
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