ヴァイス・プレジデント番外編
こんなところ、あったんだ。



「いいでしょ」



正直な感想が口から出ると、私の手を握ったままの先輩が、振り向いてにこっと笑う。

この笑顔が好きなんだけど、こんな近くで見たの初めて、と感動する間もなく、その手を引かれて。

気がついたら、キスをされていた。


えっ。


私、初めてなんだけど。

こんな、あっさり?


先輩は、つないでいなかったほうの手もとって、両手とも優しく指を絡めて握ってくれる。

話しかけるみたいに私の手を指でなでてくれるのに、急な展開だけど、やっぱり優しいな、と私はじんわり温かくなって。

だけど緊張で、自分の手が冷たくなっているのがわかった。


柔らかく、何度か唇を合わせた先輩は、ふいに顔を離すと、私を見てにこっと笑う。

私も笑い返したかったけれど、動揺と緊張でなかなか思うようにはいかず。

なんとなく、どうしたらいいかわからなくて視線を落とすと、つないでいた手が放されるのを感じた。


私の反応が鈍くて、あきれられたんだったらどうしよう、とあせって、慌てて先輩を見上げると。

一瞬目が合った先輩の顔が、また近づいて。

私は抱きしめられながら、さっきとは全然違うキスを受けていた。


重ねるというより、かみあわせるように唇を合わせて。

背の高い先輩にそうされると、私はかなり上を向くことになり、その体勢に、耳鳴りがするくらいどきどきする。


抱きしめてくれる腕は、片方が頭のうしろに回って、肩まで伸ばした私の髪をゆっくりなでてくれた。

その丁寧な仕草に、なんだかほっとして、少しだけ自信が出て、先輩の背中にしがみついて、自分からも唇を押しつける。


すると唇に濡れた感触が当たって、あ、と思っているうちに、舌と舌が触れた。

完全にパニックだ。

どうしたらいいのか、全然わからない。

< 68 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop