ヴァイス・プレジデント番外編
…失礼、と断ってレコーダーを切る。
「あの、この録音から書き起こしますので、もう少し言葉づかいを、なんとか…」
「あっ、そうか」
ごめん…と恥ずかしそうに謝る先輩は、昔とちっとも変わらない。
でも、月日を重ねたぶん、優しさにも明るさにも奥ゆきが出て、いっそう素敵だ。
「すみません、私だとやりづらいですよね」
「ううん、俺、初対面とか苦手だし。むしろ助かるよ」
嘘ばっかり。
各紙のインタビューや経済番組を見た限り、そんなところはいっさい感じられない。
シャイだけど、外交上必要な時には社交性を発揮する、それが先輩でしょ。
本当なら、ここへ来てインタビューをするのは、他の担当者のはずだった。
身内の不幸で急きょ来られなくなり、私が代打で抜擢されたのだ。
知りあいがインタビュアーというのは絶対にやりにくいはずで、だけど日程を変えるわけにもいかなかった。
「できそうですか?」
「うん…」
ちょっと不安そうに言う先輩に、休憩を入れましょうか、と提案すると、いや、いいよ、と考えこんだまま首を振る。
「神谷に、いい知恵、借りようかなあ」
「神谷?」
「俺の、秘書さん」
さっきの、と照れくさそうに微笑む先輩を見て、あらっ、と女の勘が働いた。
このふたり、もしかして?
「あの、この録音から書き起こしますので、もう少し言葉づかいを、なんとか…」
「あっ、そうか」
ごめん…と恥ずかしそうに謝る先輩は、昔とちっとも変わらない。
でも、月日を重ねたぶん、優しさにも明るさにも奥ゆきが出て、いっそう素敵だ。
「すみません、私だとやりづらいですよね」
「ううん、俺、初対面とか苦手だし。むしろ助かるよ」
嘘ばっかり。
各紙のインタビューや経済番組を見た限り、そんなところはいっさい感じられない。
シャイだけど、外交上必要な時には社交性を発揮する、それが先輩でしょ。
本当なら、ここへ来てインタビューをするのは、他の担当者のはずだった。
身内の不幸で急きょ来られなくなり、私が代打で抜擢されたのだ。
知りあいがインタビュアーというのは絶対にやりにくいはずで、だけど日程を変えるわけにもいかなかった。
「できそうですか?」
「うん…」
ちょっと不安そうに言う先輩に、休憩を入れましょうか、と提案すると、いや、いいよ、と考えこんだまま首を振る。
「神谷に、いい知恵、借りようかなあ」
「神谷?」
「俺の、秘書さん」
さっきの、と照れくさそうに微笑む先輩を見て、あらっ、と女の勘が働いた。
このふたり、もしかして?