許嫁な二人

 
 無視するたびに、唯はとまどった顔をし、最後は悲しげな顔になる。

 それが良いとは思っていなかったのに、一回が二回になり、
 三回になり、、、。

 無視すればするほど、透はもとに戻れなくなった。

 中学に入ってクラスも別々になり、もう心を強ばらせて唯を
 無視する必要はなくなったと思っていたのに、、、。



   「透、おかずばかり食べないで、ご飯も食べなさい」



 考えごとをしながら食べていたから、ご飯が手つかずで残っていた。

 慌てて、ご飯をかきこむ。




 夕食を食べ終えて、食卓を離れるとき、透は母親に声をかけた。



   「明日から部活の朝練がはじまるからもう少し早くでる。」

   「わかったわ。」



 ふと思いついたように母が言う。



   「唯ちゃんはバス通なんだってね。」



 突然、母親の口からでてきた唯の名に動揺して、透はくるりっと
 体の向きをかえて台所からでながら答えた。



   「うん、そうみたいだ。」



 そのまま素早く階段を登り、自分の部屋に透は逃げた。
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