叶ったはずの恋。

Side 龍貴







『お前らぁ~!

真面目にキャッチボールしろぉ~!!』


春休みも終わりに差し掛かった今日。

今日も俺は中学校の校庭に立ち、生徒達にソフトボールを教える。



「龍せんせー!今日厳しーぃ!!」

そんな女生徒の声が聞こえるが気にしない。


部員たちは調子が悪いのか暴投ばかりでキャッチボールになっていない。

まったく、困ったもんだ。


俺は溜め息をつくと空を仰いだ。

夏希…元気にしてるかなぁ…
そう言えば、もうすぐ大学の入学式だよな。

ってことは、スーツを着るんだ。
アイツのスーツ姿、見たかったなぁ…


なんて、空を見上げながら夏希のことを考える。

どうやら俺は夏希が好きで仕方ないらしい。


自分でも呆れるよ…



なんて考えていると



『龍せんせー!球…行っちゃった!!』


瑛司の声が飛んできて。

そうするとすぐに俺の足下を白い球が転がっていく。
気づいたときにはもう、俺を通り過ぎて行って。

チェッと舌打ちをした俺は球を追いかける。



『すいませーん!こっちでーす!!』

転がっていった球は結構遠くまで行ってしまう。
でもそこを通りかかった人が拾ってくれた。


俺は手を挙げアピール

そうすると突然、球を拾った人はピッチャーのように構えた。


そして、1歩踏み出す。
筋肉質の腕から放たれた球は見事、俺のミットに収まった。


その構え

踏み出した足

女のくせに筋肉質な腕



それは俺がよく知ってる人

俺の…愛する人



















『……………夏希』


















< 105 / 132 >

この作品をシェア

pagetop