叶ったはずの恋。
「兄貴、自分の幸せより京香さんの幸せを選んだ。
『俺にはどうすることもできない。
京香の会社を建て直す経済力もなければ、
幸せにできる保証もない。
高校生の俺には何もできないんだ』
って、涙ながらに零してたらしいよ。
きっと兄貴、憎くて仕方なかったんだろうね。
何もできない自分が憎くて、
どうすることもできない運命が憎くて。
それからすぐに京香さんと兄貴は別れた。
京香さんも別れるのは相当イヤがってたみたいだよ。
なんだかんだ言っても2年以上の付き合いだったし、
京香さんもそれなりに本気だった。
兄貴、言ったんだって。
『お前は俺とは違う人と幸せになるんだ。
………ならなくちゃいけない。』
どっかの誰かさんに、ちょっと似てるよね」
兄貴は、桐ちゃんに似ていた。
性格も、考え方も。
いつも自分のことより人のことばっかりで。
もっと自分の幸せ、考えたほうがいいよ、2人とも。
そんなことを考えているとなぜだか笑えてきた。
兄貴と桐ちゃんの仲が良かったのは似てたからだ。
うり二つの人が目の前にいて。
そうか、そうだったのか。