鬼部長の素顔


財布を持って、席を立とうとしたら



「優子、どこ行くの?」


麻耶先輩が不思議そうに私を見た



『ココア買いに……』


そう言うと、麻耶先輩は私の机の隅に指をさした


……!?
ココア……だ。
え?けど、私さっき全部、部長にぶちまけたし、そのあと買ってない



「檀野部長、置いてったわよ」


へ?
麻耶先輩はニコッとしながら


「鬼も人並みなのよ」


そう言って、麻耶先輩は手帳を開きながら得意先に電話をし始めた



鬼も人並み……か、
確かに、あの残業の日は違った

そして……あの日も。




『いただきますね』



部長の机をチラッと見て
私はココアに口をつけた
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