季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
早苗さんはこんな時まで優しい。

これ以上一緒にいると、またその優しさに甘えてしまいそうになる。

「早苗さんと会うのはこれで終わりにします。申し訳ないんですけど…お店も…辞めさせて下さい…。」

私が頭を下げると、早苗さんはまた大きなため息をついた。

「……とりあえず…ここ出ようか。」

カフェを出ると、早苗さんは何も言わず私の手を引いて歩き出した。

いつもより強いその力に私は戸惑う。

「早苗さん…?」

「俺だって朱里が好きだ。ハイそうですかって簡単に引き下がれないよ。」

私は早苗さんに手を引かれ、見知らぬマンションに連れて行かれた。

「あの…ここは…?」

「俺の部屋。」

「えっ?!」

早苗さんは驚く私を抱き上げて靴を脱がせ、大きなソファーの上で私を強く抱きしめた。

「もっと早くこうしてれば良かった。」

「あっ…あの…早苗さん…私…。」

「前も言ったけど、俺は朱里が思ってるほど大人じゃないし余裕もない。もう大人ぶるのやめる。」

「えっ…。」

ソファーの上に押し倒され、唇を塞がれた。

早苗さんは強引なのに優しいキスを何度もくりかえし、私のブラウスのボタンをはずして、指先と唇で胸に触れた。

「…抵抗しないの?イヤだって言わないと、やめないよ。」



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