季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
シャワーを終えた順平が、タオルで髪を拭きながらリビングに戻ってきた。

下は履いてるけど、上半身は裸だ。

服着ろ、服。

相変わらず細身ではあるけれど、昔よりたくましくなった腕とか胸板とか、とにかく目のやり場に困るじゃないか。

「人の体ジロジロ見てんなよ。」

「ジロジロは見てない。見られて困るなら服着てよ。」

「はぁ?オマエが見なきゃ済む事だろうが。」

ハイハイ。

おっしゃる通りですね。

別にアンタの裸なんて見たくもないし。

「それより、もうしばらく布団借りてていい?今は布団買う余裕なくて…。」

「そんなに金ねぇのか。」

「うん。ダメなら返すけど…。」

「なくても困らねぇ。」

「それじゃあ…もうしばらく借りるね。ありがとう。」

「別に。どうせ客用の布団だし。」

順平は冷蔵庫からビールを取り出してソファーに身を沈めた。

ビールを飲む横顔とか、首筋とか、あの頃に比べると随分大人っぽくなったなと思う。

「だからジロジロ見んなって。」

「ジロジロは見てない。」

「俺の体とビール狙ってるな?」

「…どっちも狙ってないから。お風呂入ってくる。」

私は買ったばかりのシャンプーなどが入った袋と着替えを手に、浴室へ向かった。


なんで私が今更、順平の体を狙わなきゃいけないんだよ。


…確かにいい体してたけど。





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