とっくに恋だった―壁越しの片想い―


この二ヶ月、平沢さんや木崎さん、樋口さんのおかげで、無事、食欲と安眠を取り戻した。

一般的に睡眠のゴールデンタイムと呼ばれる22時から2時までの間はなるべく眠るように意識して早寝しているし、ご飯もしっかり食べて豆乳もかかさず飲んではいる。

けれど……胸の成長はといえば、まぁ、もしかしたら多少は大きくなったかもしれない、というくらいのものだった。

そもそも、この歳で成長するものなのかがわからない。

大きさを具体的にいえば、ソフトテニスのボールを潰してつけたみたいな、それくらいのものだ。

……これは、物足りる量あるだろうか。

よく、手のひらに収まるくらいがちょうどいい、みたいなことを耳にするけれど……平沢さんの手は大きい。
すっぽりどころかブカブカだ。

いつまでも胸を眺めていたところで仕方ないから、とりあえず裏起毛になっているスウェットをはいて、上には、同じく裏起毛のジップアップのパーカーを羽織る。

十二月っていう時期を考えるとそれでも薄着だけど、室内ならこれで問題なかった。

平沢さんの部屋は、暖房に電気カーペットにひざ掛けと、防寒対策が完璧だからとくに。

もっとも、平沢さん自身はそこまで寒がりじゃないから、先月の初めころにいつの間にか敷かれていた電気カーペットも、真新しいふわふわしたひざ掛けも、私を想ってなのかもしれない。

そう思うと、嬉しさにうっかりにやけそうになる口を、キュッと引き締めてから部屋を出る。



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