夏 恋 花 火

「ごめん。気持ちは嬉しいんだけど、俺、好きな人がいるんだ」


ずしっと心が重くなる。


「…南、先輩ですか？」

「よく知ってるね。うん、そう。まだ片想いだけど」


分かってはいたけど、やっぱり本人の口から聞くと辛いなぁ…。

ぎゅっと唇をかみ締める。


「本当、ごめん…俺……」

「いえっ気にしないでください！最初からダメ元で誘ったんで、全然平気です！」

「友香ちゃん…」

「ありがとうございました！じゃあ、また！」



から元気を演じて、先輩が背を向けるまで演じ続けて、

もう完全に先輩が見えなくなった時、私は泣きながらしゃがみ込んでいた。


こうなることは分かってた。


でも気持ちを伝えられたんだからいいじゃないか。

そう言い聞かせても、やっぱり涙は止まらない。



するとポンッと頭に誰かの手が置かれた。

見上げると、そこには俊也がいた。



いつになく優しい目で私を見ていた。