バナナの実 【近未来 ハード SF】

彼は、むかし感じた直感が、間違っていなかったことを改めて思い直す。


2011年春、今年もF1の開幕シーズンを迎える。


『モナコ グランプリが始まると、今年も一年が始まった気がするねぇ~』


それは、金メッシュ、やすの言葉。


辻は、プノンペンの安宿で、一緒にF1 の決勝中継を見ながら、その魅力を教えてくれた彼ことを懐かしく思う。


以来、辻は、そのファンになり、毎戦テレビ中継を楽しみにしていた。


今年は、モナコにF1 観戦にでも行こうかなぁ。


白いレース越しの窓からは、山を背景に、辻が耕す畑が遠くに見ることができる。


そして、その窓の近くには、足に高級チーク材が使われているコンソールテーブル。


立派な彫刻のほどこされたその上に、まだ、きれいに掃除できないピンクのファンデーションが付いたノートパソコンが開らかれていた。


辻は、それを目にする度、あの時見せた彼女の怒鳴った顔と優しい笑顔を思い出すのだった。




この小説は、永遠に未完のままである。


それが、彼の人生そのものなのだから・・・。






 ≪ あとがきにかえて へ・・・ ≫
< 230 / 239 >

この作品をシェア

pagetop