バナナの実 【近未来 ハード SF】
第11章  仮想世界




■ 第11章 仮想世界 ■





図書館から借りてきたウェブ2.0に関する書物を読んでいると、辻は、自分の小説シナリオと言葉にできない共通点をいくつも感じた。


それらの点は、海外でふと脳内に見たものと同じように、今までばらばらに点在していた点と点を結んでいくと、ある意味を持った図形をなしているかのようだった。


そして、どうやら自分の小説シナリオが、ネット業界のウェブ2.0を小説と映画の世界に応用しているということに気付いた時、彼は身震いを覚える。


果してその直感が本当に正しいのかどうかは分からなかったが、再び小説の書き直しへと突き動かしたのだった。





その改稿には三ヵ月を要した。

今までのタイトルを改め、彼はそのシナリオを”セカンド ソート”(THE SECOND THOUGHT)と名づけた。


面白いことに彼にとっては、ファース トソート、セカンド ソートのどちらでも小説に描かれた未来は実現する、ということだった。


未来実現する過程が異なるだけで、結果は同じであると考えていたようだ。


その考察による両者の違いは、既存の道路網を使用するか、新たに独自の道路を造るかの違いでしかないらしい。


セカンド ソートはその道路網を、要するに、バナナの実がなる環境を一から作り上げなければならず、その分、未来実現までにより多くの時間がかかる、というのが彼の見方であった。


そして、この是非は、ブログ上で不特定多数と広く議論することで回答を得ることができるはずだという打算があったのもまた事実である。
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