思いがけずロマンチック
9. 王子様と決意

絶対に抗議する、と心に決めたものの肝心な益子課長は連日本社に行ったきり。直行直帰だから顔を合わせる機会さえない。


顔を合わせなくて済むのは気分的には楽だけど、言いたいことがある時に居ないから苛立ちが募るばかり。


掲示板には帰社予定の時刻さえ書いてないから、いつ帰ってくるのかわからない。行き場をなくしたもやもやした気持ちがすっかり集中力をかき消していた。


こちらへと近づいてくる足音を聴きつける度に、キーを打つ手を止めて顔を上げる。総務課の前を通り過ぎる社員を確かめては溜め息。


こんなにも益子課長を待っている自分が情けなくて悔しくなる。


聞き慣れた軽快な足音に振り向くと、千夏さんが笑顔で手を振っている。


「あの人、見かけないけど抗議できた?」

「まだですよ、ずっと本社だそうです」


声に出してしまうと、溜まっている苛立ちが今にも噴き出してしまいそうになる。溜まりに溜まった苛立ちはもはや怒りに変わる寸前なのだから。



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