思いがけずロマンチック
なんとなく嫌な予感。
濃いグレイのジャケットの胸元から覗いた白いワイシャツには、不自然な茶色いシミが広がっている。流れるような形を描きながら、ジャケットの濃いグレイをさらに濃く艶っぽく染めて。
その襟を握り締める私の手から、握っていたはずのアイスコーヒーが消えて失くなっている。
シミの正体がわかった途端に、体がきゅうっと強張った。そっとシミから手を離すと、コーヒーの香りが一気に広がる。
罪悪感とともに見上げた王子は半ば呆れ顔。目が合ってしまう前に私から目を逸らした。
「すみません、降ります」
とっさに出てきた訳のわからない言葉は第一声が上擦って、焦ってるのが丸わかり。恥ずかしさと罪悪感が一気にこみ上げてくる。
一刻も早く降りてしまおう、ここから逃げてしまおう。
気持ちは加速するのに体が上手く動かない。まるで釣り上げられた魚のように、王子の腕の中で体をくねらせる私はなんて無様。
「ちょっと待て、暴れるな!」
王子の制止を素直に聞こうとしなかったのが悪かった。