思いがけずロマンチック
机の上の書類を纏めて、パソコンの電源をオフ。気持ちは片付いたのに、古紙とゴミ箱が溜まってることに気づいてしまった。
見なかったことにしようと思ったけれど……、これだけ捨ててから帰ろう。
古紙とゴミ箱を両手に抱えて、事務所の外にあるゴミの収集場所へと向かう。
目の前にはきちんと閉まったドア。開けるには古紙かゴミ箱か、どちらかを一度下ろして手を空けなければならない。
渋々足を止めて古紙を持ち替えて、空いた手をドアへと伸ばしたら勢いよくドアが開いた。
「わっ!」
ドアノブを掴み損ねた手に体が引っ張られて前のめりになっていく。古紙とゴミ箱を反対の腕に抱えたまま、私の体が抱き止められる。
「危ないなあ……気をつけろ」
吐く息とともに聴こえてきたのは、有田さんの声。「すみません」と謝る私に答えもせず、体を起こして腕に抱えていた古紙とゴミ箱を取り上げた。
「これがコーヒーじゃなくてよかったよ」
挑発的な言葉を発した有田さんは、事務所には入らずにくるりと体を翻す。私の古紙とゴミ箱を持ったまま。
「有田さん、どこへ?」
「ゴミを捨てに行くに決まってる、ついて来なくていいから席に戻ってろ」
有田さんは言ってくれたけれど、さすがに席には戻れない。事務所のドアの傍で有田さんが戻ってくるのを待って、ちゃんとお礼を言った。
意外といいところがあると思いながら。