思いがけずロマンチック
「企画書は出来たのか? 添削してやろう」
と言う有田さんに役員室へと連れられた。
もちろん織部さんと千夏さんの姿はない。益子課長と言い争っているうちに話終えて、席へと戻ってしまったらしい。
席に着いた有田さんに企画書を手渡したけれど落ち着かない。企画書の出来がどうこうだけでなく、織部さんと千夏さんのことも気掛かりだ。
私の不安なんて気にも留めず、有田さんは企画書に目を通していく。
時々眉間にしわを寄せたり、瞼をピクリと動かしたり、唇を結び直したり。有田さんの表情が化するたびに、私の気持ちは浮いたり沈んだり。またお直しを言いつけられるんじゃないかとひやひやしたり。
有田さんが顔を上げた。ぱんっと企画書を閉じて、険しい顔のまま口角を上げる。
「上等だ、ちゃんと言いたいことがわかってるじゃないか」
声を聴いた途端に、胸に支えていたもやもやしたものが消え去っていく。
「ありがとうございます、では、これを持って笠間さんの所へ……」
「いいだろう、来週だったな?」
心なしか有田さんの声も弾んでいるように聴こえてしまう。自己満足ではなくて、認めてくれたことが嬉しい。
有田さんは分厚い手帳を開いた。