【完】ぎゅっとしててね?
席替えたいむ。
合コンっぽいんだけど。


俺こっち行くわ、とか。そういう男子のリードいーらない。


お向かいの斜め右で先輩に絡まれてるキミ。そう、キミ。


「お隣いーい?」


あたしにっこり。
ちょっとの間の後。


「喜んで」


って慶太くん、嬉しそうに笑う。



慶太くんの隣、安心感はなまる。
あたし、酔っ払いの相手とか向いてないみたい。


「なんかやっとノンビリできるかも」



「可愛いこと言うね」


「へへー」



あ、このザクロジュース超美味しい。リピ。



「おいしそうに飲むね。それ何?」


「ザクロ。飲む?」


ストローを口もとに運んで、どーぞって。


ヤヨちゃんなら「自分で飲めるわ!」って怒るとこだけど、慶太くんはちゅーちゅー。


どう?おいし?


「美味しいね」


にこにこ慶太くん。気に入ってもらえて嬉しいよ。



ほのぼのと慶太くんの隣だったのに、3回目の席替えで先輩たちの言葉で別の人の隣の席になった。



20才。Y大生。
軽度酔っ払い。


「芙祐ちゃん本当可愛いよね。モテるでしょ」


「もてないですよ。ずっと彼氏いないし」



「意外ー。いつから?」


「4月から」



「そんなにたってないじゃん!」


笑われた。
4月から9月までいないんだよ?
かなり長いと思うけど……。



「で、今は慶太に狙われてんだ?」



「うーん、たぶん」



「慶太のこと実際どう?いいやつだよ。気が効くし」


「いい人なのはわかるけど…。いっつも優しいし」



「ただなー、付き合い方がなあ。マメじゃないっつうか、女心に合わせてやらないっていうか。適当というか」



「へぇー。でもあたしもマメじゃないですよ」



「束縛されたとかですぐ別れてたし、根性がないんだよな」



「あたしも根性ないかも。束縛されるの嫌な気持ちわかっちゃう」


「……へぇーえ?」


Y大生がにやにやしてる。


「なんですか?」


「慶太のことフォローしちゃって。好きなんじゃねえの?さっきも慶太の隣にずっといたし」




「……好きなのかなぁ?どうだろう」



いいなって思うところいっぱい、たしかにある。
でも、ひとってそういうもんっていうか。
みんな長所なんかいっぱいあるじゃん。



「先輩なに話してんすか」


「慶太はいいんだよ、ちょっとあっち行ってろって」


「芙祐ちゃんに手ぇださないって言ったじゃないですか」



「だしてねえって!なぁ芙祐ちゃん」



「うん。世間話」



「本当に?まじで余計なこと絶対言わないでくださいね」


「わかってるから、ほら、戻れ」



あはは、焦ってる慶太くん初めてみた。
かーわい。




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